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ワンポイントリハビリ 「高齢者の誤嚥 〜予防して、楽しい食事を〜」

 『誤嚥』というのは、食べ物あるいは液体を飲み込む際に、本来の道筋である食道へ入っていくべきものが気管という呼吸の通り道に入ってしまうことを言います。空気と食べ物は口の一番奥で通路がいったん一緒になり、普段はここで交通整理が行われています。つまり口から喉にかけてのさまざまな神経と筋肉が協調運動を行って食べ物と水は食道に送り込まれ、その瞬間、気管には蓋がされます。口の中に食べ物があっても噛み砕いている時はその奥までは食べ物が流れ込まないように無意識にブロックしており、気管の蓋は開いたままです。万一、液体とか固形物が気管内に入り込むと反射的に咳が出ます。この咳によって間違って入り込んだものを追い出しているわけです。

口から喉にかけての飲み込む力が衰えたり、あるいは何かの病気で反射運動が低下すると容易に誤嚥が起こります。また食べ物の状態によっては誤嚥を起こしやすいものがあります。一般には流動物(水分など)が誤嚥を起こしやすいとされています。さらに本人の状態によっては食べ物でなくても、つまり唾液、あるいは逆流してきた胃液、腸液などが気管に流れ込んで誤嚥を起こすことがあります。

《高齢者に多い誤嚥性肺炎》

医学が進んだ現代でも、肺炎は高齢者にとって命にかかわる病気であり、がん、心疾患、脳血管疾患についで高齢者死因の第4位を占めています。肺炎にはいろいろな種類がありますが、はっきりとした“むせ”がなくとも、経過から誤嚥が原因らしいものを含めると高齢者の肺炎のうち約7割が該当するという報告があります。

一般に誤嚥は、食事中に起こっていると思われがちですが、実際にはそれだけではありません。何となく調子が悪いので病院を受診すると誤嚥性肺炎と診断される場合がよくあります。こうしたはっきりしない誤嚥は、夜間に本人あるいは家族も気がつかない場合に起こっている可能性が高く、脳梗塞(パーキンソン病など)、認知症、何らかの原因による意識レベルの低下、胃食道逆流、食道の通過障害などがあると誤嚥の危険が増します。また口の中が不衛生だと誤嚥後の肺炎発生の危険が高まります。

《こうして誤嚥を予防しよう》
①味、温度などの点で刺激が強めの食事を出す
②小さめのスプーンを用意してひと口の量を減らす
③テレビを見ながらなどを避け、食事に集中させる
④食品にはとろみを付けたもの、もしくは半固形のものを選ぶ
⑤食事後2時間は上体を起こしておく
⑥よく歯磨きをして口腔内は常に清潔に保つ

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これらの工夫が誤嚥の予防につながります。一方で意思表示が充分できない方に食べるように勧めすぎると、かえって誤嚥を悪化させることがあるので注意が必要です。食事は生活を豊かにするための大切な行為です。高齢になっても誤嚥を予防し、楽しい食事を続けて下さい。

社会福祉法人 南東北福祉事業団
総合南東北福祉センター  作業療法士