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ワンポイントメディカル 「ノロウイルス感染症とその対応・予防」

 毎年11月頃から翌年の4月にかけて、ノロウイルスの感染を原因とするウイルス性のおう吐・下痢症
noro 1.gifが流行します。特に保育園(所)、幼稚園、小学校などの子ども達が集団生活を送っている施設では、内部でヒトからヒトに感染し、爆発的に流行することがあります。ノロウイルス感染症は、牡蠣(かき)などの2枚貝の生食による食中毒が有名ですが、保育園(所)、幼稚園、小学校などで発生した集団感染の大半は、誰かがまずノロウイルスに感染し、施設内でヒトからヒトへ感染して拡がっていくというものでした。このヒトからヒトへの感染力はきわめて強力です。食習慣の問題もあって、毎年発生するノロウイルス感染の流行を阻止することは残念ながら不可能ですが、その流行を最小限に食い止めるために、ノロウイルス感染症の症状・治療法、予防方法、家庭における注意点等を以下にあげてみました。

1、ノロウイルス感染症の症状・治療法について
(1)症状:主な症状ははき気、おう吐及び下痢です。通常は便に血液は混じりません。あまり高い熱とならないことが多いです。小児ではおう吐が多く、おう吐・下痢は一日数回からひどい時には10回以上の時もあります。感染してから発病するまでの「潜伏期間(せんぷくきかん)」は短くて数時間〜数日(平均1〜2日)であり、症状の持続する期間も数時間〜数日(平均1〜2日)と短期間です。元々他の病気があったり、大きく体力が低下している等がなければ、重症になって長い間入院しないといけないということはまずありませんが、ごくまれにおう吐した物を喉に詰めて窒息(ちっそく)することがありますので注意してください。
(2)治療法:特効薬はありません。症状の持続する期間は短いですから、その間に脱水にならないように、できる限り水分の補給をすること(場合によっては病院で点滴をしてもらって)が一番大切です。抗生物質は効果がありませんし、下痢の期間を遷延させることがあるので、ノロウイルス感染症に対しては通常は使用しません。その他は吐き気止めや整腸剤などの薬を使用する対症療法が一般的です。下痢が長びく場合には下痢止めの薬を投与することもありますが、最初から用いるべきではありません。

2、予防方法
ノロウイルスにはワクチンもなく、その感染を防ぐことは簡単ではありません。そして特に子ども達や高齢者には簡単に感染して発病します。最も重要で、効果的な予防方法は「流水・石けんによる手洗い」ですが、他にも様々な注意すべきことがあります。
以下に、一般的な予防方法をあげてみました。しかし、今後も日本国内ではノロウイルス感染症の流行は続くでしょうし、子ども達は何度もその洗礼を浴びていくことでしょう。流行期には感染の機会はいたるところにありますし、また症状を持ったまま保育園、幼稚園、学校などに登園(登校)させることによって、その子どもが感染源となって周囲の子ども達に感染が広がっていき、それがまた各家庭に広がり、地域内で広かっていく事は理解しておいてください。
(1)調理と配膳に関して
人によっては感染しても発病せずに(不顕性感染と呼びます)、ノロウイルスを便から排出し続けている場合があります。保護者などの大人の方が知らないうちにお子様にノロウイルスを感染させてしまう可能性は低くはありません。以下の注意点を守ってください。
・調理の前と後で流水・石けん(液体石けんが推奨されます)による手洗いをしっかりと行うこと。
・貝類をその内臓を含んだままで加熱調理する際には十分に加熱して調理し、貝類を調理したまな板や包丁はすぐに熱湯消毒すること。
・食事を配膳する際にも手洗いをすることが勧められる。特に自分が下痢や吐き気がある場合は必ず行うこと。

3、家庭における注意点
学校、職場、施設内でノロウイルス感染によるおう吐・下痢症が発生しても、その最初の発端は家庭内での感染による場合が多いです。特に子どもや高齢者は健康な成人よりもずっとノロウイルスに感染し、発病しやすいですから、家庭内での注意が大切です。
(1)最も重要な予防方法は手洗いです。帰宅時、食事前には、家族の方々全員が流水・石けんによ
noro 2.gifる手洗いを行うようにしてください。
(2)貝類の内臓を含んだ生食は時にノロウイルス感染の原因となることを知っておいてください。高齢者や乳幼児は避ける方が無難です。
(3)調理や配膳は、充分に流水・石けんで手を洗ってからおこなってください。


  「国立感染症研究所 感染症情報センター」ホームページより転記


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