2015年3月 2日
「ぼけ」と「認知症」の違いは、一般的に「ぼけ」は加齢に伴う(生理的老化)精神変化の通俗的な表現として、「認知症」は医学的な言葉として使われることが多いです。色が薄くなることや淡くなることを文学的にぼけると表現し、一方認知症の概念は、一旦獲得された知能の障害であり、このために日常生活に支障をきたした状態で、脳の器質的病変を原因とするとされています。(器質的病変:基礎に明らかな原因を持つ病変)なかなか新しいことが覚えられない、ヒトの名前をなかなか思い出せないなど記憶に関して低下したなと感じたことがないでしょうか。記憶は、記銘(覚える)、保持(覚えておく)、再生(思い出す)から成り立ちます。なかなか新しいことが覚えられないというのは、記銘の中の短期記銘力が低下した状態であり、人の名前をなかなか思い出せないのは再生能力の低下なのです。
○生理的老化に伴う記憶低下の特徴
①最近の記憶が低下しやすい。
②再生障害(思い出せない)が目立つことが多い。
③陳述記憶(事実や出来事を覚え、言葉で述べることができる記憶)低下はあるが軽度。
例:富士山は日本で一番高い山。私は20歳で免許を取ったなど。
④手続き記憶(体で覚えた技術やノウハウ)。
例:自転車や車の運転、歩くことや箸の使い方などは失われない。
⑤きわめて徐々にしか進行しない。
○認知症などの病的記憶障害の特徴
①記憶全体が著明に低下する。
②見当識(時、場所、人物など)が障害される。
③学習能力が著しく障害される。
④記憶の低下を自覚しない。
⑤進行が早いことがある。
認知症の初期症状として、記憶障害(物忘れ)が出現しやすいですが、本人が自覚する前に家族などの周囲の人が気づく場合があります。生理的老化なのか認知症の初期症状なのかを判断する必要があります。何事も早期発見早期対応が一番です。