お知らせ

口腔ケア

1634780.png★口腔ケアとは
「口腔ケア」とは、口の中の清潔を保つことです。口腔ケアは身体全体の健康を保つためのケアとも言われています。介護の現場でよく使われる言葉の一つでもあります。
加齢とともに身体の機能が衰えると、自力で口腔環境を整えることが難しくなるため、介護者が代わりに高齢者の口腔内をケアする必要があります。

     

     

★高齢者の口腔内には問題がたくさんある
年齢を重ねると身体には様々な変化が現れますが、それは口腔内も例外ではありません。高齢者の口腔内にどんな問題があるかは以下の通りです。
 ①自浄作用が低下している
口腔内には「自浄作用」があります。唾液の力で歯の表面や舌、粘膜についた汚れや細菌を洗い流し、清潔に保つというものです。しかし、身体機能が衰えて唾液の分泌が減っている高齢者の口腔内は、自浄作用が低下している状態になっており、意識してきれいに保つ必要があります。
 ②虫歯や歯周病が多い
加齢によって歯茎が下がり歯の根元があらわになると、そこから虫歯が発生しやすくなります。また、高齢者の口腔内は自浄作用が弱まっているため、本来は唾液で洗い流されるはずの細菌が増殖し、歯周病にもかかりやすい状態です。加齢による免疫の低下も、虫歯や歯周病菌が増える原因の一つです。
 ③治療痕や入れ歯が多い
高齢者は虫歯や歯周病にかかった経験が多く、詰め物などの治療痕が残っている人も少なくありません。また、歯周病で歯が抜けてしまい、入れ歯を使用する人も増加します。詰め物をしている場合は、その下で虫歯が進行していることがあり、入れ歯を使用している場合は、入れ歯と粘膜の隙間に細菌が繁殖しやすくなります。
 ④味覚が変化する
人は、舌の表面にある味蕾(みらい)という小さな器官で味を感じます。しかし高齢者の場合、口の中の自浄作用が低下しているため、舌の表面に舌苔がつきやすく、味を感じにくくなったり、味覚が変化したりすることがあります。また、偏った食生活による栄養不足も味覚障害の原因の一つです。
 ⑤口腔内が乾燥する(ドライマウス)
高齢になると、噛む力の低下や服用している薬の影響で唾液の量が減ることがあります。唾液は口腔内を清潔に保つ役割がありますので、ドライマウスは虫歯や歯周病の進行、また、雑菌の繁殖による口臭の原因になります。

     
★口腔ケアの重要性
口腔機能が低下すると、「噛んで味わう」「飲み込む」といった動作をスムーズに行えなくなるため、十分な栄養を摂取できません。栄養不足状態が続くと、運動機能の低下や認知症の進行、さらなる摂食障害につながる可能性があります。
口腔ケアは、歯みがきや口腔内の洗浄で歯周病などを予防するだけでなく、摂食トレーニングや誤嚥性肺炎の予防といった高齢者の身体機能の回復につながる内容も含んでいます。口腔ケアを適切に行えば、高齢者に「美味しく食べる」という生きがいを取り戻すことができるばかりか、介護をする側の負担を軽減させることにもつながります。

     
★口腔ケアで得られる具体的な効果
メリットが多い口腔ケア。得られる具体的な効果は以下の通りです。
 ①唾液の分泌を促進する
残留物や細菌で口腔内が不衛生な状態では、唾液が出にくくなり口の中が乾燥します。口の中を清潔にすると、唾液の分泌が促進されます。また、歯ブラシなどで「唾液腺」を刺激することで、意図的に分泌量を増やすことができます。
 ②感染症や発熱を予防する
口の中にいる細菌の中には、表皮感染症や食中毒を引き起こす「黄色ブドウ球菌」など、全身疾患の原因になる菌も存在します。口腔ケアをしっかり行わないと口腔内が菌の温床となり、感染症や肺炎にかかりやすくなることがあります。
 ③認知症を予防する
口を開けたり閉じたりして噛んで食べるという行為は、脳に酸素を送ったり刺激を与えたりするため、中枢神経を活性化し認知症を予防すると言われています。
 ④誤嚥性肺炎を予防する
嚥下機能(食べ物を飲み込む機能)が衰えると、食べ物や唾液が気管に入ってしまうことがあります。この時、口腔内の細菌が肺に入って起こるのが「誤嚥性肺炎」です。口腔内の細菌や汚れを減らすことは誤嚥性肺炎の予防につながります。誤嚥性肺炎は高齢者の命にかかわることもある怖い病気なので、しっかり予防することが重要です。
 ⑤口腔機能の低下を防ぐ
高齢者は「噛む」「飲み込む」「呼吸する」「話す」「表情を作る」といった口腔機能全般が低下しやすい傾向にあります。口腔機能が衰えると、十分な栄養が摂取できなくなり、免疫力の低下や摂食障害につながります。口腔ケアを通して口腔機能を向上・改善すれば、身体全体の健康の回復が期待できます。

     
★口腔ケア物品の紹介・使用方法
実際に南東北ロイヤルライフ館で使用している口腔ケアの物品の紹介と使用方法について説明します。

     
 ①歯ブラシ

ok2020.1.21 1.JPG一般的な歯ブラシです。使用方法は一般的なものと変わりはありません。

     

     

     

     

     

          

 ②粘膜ブラシ

ok2020.1.21 2.JPG一般的な歯ブラシより柔らかいブラシです。
入れ歯を使っていて、残歯が少ない人の歯茎や頬の内側の粘膜のケアに使います。

     

     

     

     

     
 ③舌ブラシ

ok2020.1.21 3.JPGok2020.1.21 4.JPG舌のケアに使います。下の付け根付近から舌先に動かし、汚れをこすり落とします。
毛がついているタイプや、でこぼこがついたプラスチックのタイプなどの種類があります。

     

     

     
 ④口腔ウエットティッシュ

ok2020.1.21 5.JPGうがいができない人に使います。
歯ブラシや粘膜ブラシでケアをした後に、うがいの代わりに口腔内を拭き取りケアします。

      

     

     

     

     
★上手な口腔ケアの仕方
 ①歯みがき編
・歯ブラシは鉛筆のように持つ
・歯の汚れの残りやすい部分を丁寧に磨く
・歯ブラシの当て方は「ソフトタッチ」、揺らすように動かす
・一度に1、2本ずつ磨く
 ②うがい編
・唇をしっかり閉じる
・大きく頬を膨らませる
・口に含んだ水を勢い良く動かす

     
★義歯とは
義歯とはいわゆる入れ歯のことで、欠損した歯の機能を補う着脱可能な「補綴(ほてつ)装置」のことです。
義歯の歯の部分を「人工歯」、歯茎に当たる部分を「床(しょう)」と呼びます。

     
★義歯の紹介
補う歯に応じて片顎(上顎・下顎)の歯のすべてを補う「全部床義歯」(フルデンチャー、コンプリートデンチャー)と、一部を補う「部分床義歯」(パーシャルデンチャー)に分けられます。

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    全部床義歯           部分床義歯

     
★義歯の洗浄方法
義歯は熱・乾燥・摩擦・衝撃に弱いため、以下の点に留意して洗浄します。
・流水で洗う
・水につける。(蓋つきの専用容器で保管する)
・歯磨き剤でこすらない
・落とさない
洗浄方法
①目に見える汚れは専用ブラシで清掃
②目に見えない汚れを洗浄剤で除菌
 ※口腔内はうがいをするか、粘膜ブラシなどでケアします。

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★まとめ
口腔ケアをしっかり実施することで、様々なメリットが得られます。口腔ケアにより改善できることは多岐にわたります。運動や栄養摂取と同様に、口腔内を清潔に保つことは身体全体において重要なことです。面倒がらず、毎日しっかりケアするようにしましょう。

     

     

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